歯の健康
矯正について(2011年〜2012年掲載)
アメリカでの矯正治療についての情報を、「アメリカで歯を治療するとき」(福永玲子著)の中から抜粋してご紹介させていただきます。(記事提供:植月歯科医院)
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日本とアメリカの違い
仕事や勉学などでアメリカに住むことになった日本人の多くの方が、「アメリカ人は皆さんはがきれいですね」と言われます。これには理由があって、アメリカでは、歯の予防が進んでいるからです。一般にアメリカ人は年2回、検診とクリーニング(歯の清掃・歯石除去)のため歯医者に行きます。「ここ何年間か歯科医師へ行ったことがない」と誇らしげにいう日本人もいますが、それは自慢にはならないのでしょうか。ある日、突然ひどいむし歯や歯周病にかかり、歯が痛くなったり、グラグラしないかと人事ながら心配になります。
むし歯は早いうちに治療すれば痛みもなく、簡単に治療できますから、定期健診を受け、早めにむし歯を見つけて治療することは大変大切なことです。
アメリカは、世界中でも歯科医療水準が最も高いといわれています。アメリカの歯科医療施設はととのっており、専門に分化し、最新の技術を駆使した治療を各専門の歯科医から安心して受けることができます。従ってアメリカに住む日本人もこの恩恵に浴することができます。
矯正歯科とは
皆様もご存知のように矯正歯科は歯並びを治す歯科です。中には、小児歯科医または、一般歯科医から矯正歯科に一度相談してみたらと言われた方がいらっしゃるかもしれません。その中には歯並びが悪くカッコが悪いと思う人もいれば、うまく物が噛めない人もいれば、今は問題がなくてもこのままにしておくと将来大変な問題が起こるかもしれない人もいるかもしれません。
ブレイス(歯列矯正装置)をはめて歯並びをきれいになおせばためらいなく歯をみせてにっこり笑えるようになることはきっと誰でも知っている矯正歯科で得られる利点だと思います。しかし、これだけでなく、歯列をまっすぐすると物がよく噛め何でも食べられるので栄養のバランスを保つことができ、健康上非常に良く歯磨きも楽です。矯正するとでこぼこの歯列では、届きにくいところにも歯ブラシが満遍なく届いてプラークをとりやすく、むし歯や歯肉炎を起こしにくくなります。歯肉炎を放置すると歯周病になり歯を喪失することもあるので、矯正は口腔衛生上からも大切です。歯並びを気にせずにほほ笑むことができると、自信がつき、性格も社交的に明るく変わることも多いものです。この心理的要因も矯正の大きな側面です。
矯正歯科を訪ねる人の第一の動機は、歯並びを良くし、外見を良くしたいを言うことかもしれませんが、結果的には、健康上、口腔衛生上、精神上もプラスになるといえるでしょう。
矯正歯科医の資格
矯正歯科医は歯および顔面の病気を診断し、予防し治療する歯科医です。アメリカでは、大学の学部4年卒業後、大学院の歯科部4年を修了し、さらに少なくとも2年間、米国歯科医師会(ADA)の認定する大学で歯科矯正学を学ばなければなりません。このような長期にわたるトレーニングには、遺伝学、胎生学、人間の成長と発達に関する学問、生理学、生物物理学などが含まれています。このような過程を修了した者のみが、矯正歯科医としての資格を与えられます。アメリカの矯正歯科の水準は世界中でも非常に高いのではないでしょうか?
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何歳から治療を始めたらよいか
年齢層に区別なく、矯正によって審美上、機能上の改善はできますが、最高の改良ができて、しかも短期間で、なるべく少ない費用を希望するときは、最適の年齢というものがあります。
~最適の時期を見きわめて~
米国矯正歯科学会は子供が矯正歯科を始めて訪れる年齢は7歳くらいが適当だとしていますが、矯正しなければならない問題が明らかなときはそれより早い受診を勧めています。問題の種類にもよりますが、早い場合は2~3歳ごろに診察を受けたほうが良い場合もあります。笑ったときに問題がないようにみえても、不正咬合が隠れている場合があります。治療をすすめるのは何年か後にしても、幼いときに診てもらい適切な治療をすすめる計画を立てておくことは大切なことです。
早期治療をした方が問題をひどくせず有効な場合もありますし、大きくなってからよりも治療が簡単で期間も短くてすむ場合もあります。またあごの骨を拡大しなければならないなど、装置だけで矯正するのが難しい場合は、歯科口腔外科による顎骨の手術が必要になります。
乳歯の歯並びが悪くても永久歯になると自然に治るのではないかと考える方が多いのですが、自然に治る可能性は非常に低いといえるでしょう。
大人の矯正も非常に成功率が高く、問題はありませんが、子供のときに矯正をする利点は、骨の発達をうまく利用できることと、子供の骨は大人の骨に比べて密度が低く骨格に柔軟性があることです。
~矯正は子供だけのものではない~
矯正の基本は歯を移動させることですが、これは基本的には大人でも子供でもどのような年齢の人でも可能です。矯正が成功するかどうかはその人の歯、歯肉、骨の健康状態によるところが大きく、年齢とはあまり関係ありません。矯正を受けると必ず前の状態より良くなります。最善の状態に改善するには年をとりすぎているのでは、という心配はいりません。昔は歯の矯正は子供だけのものと思われていたことがありますが、現在アメリカでは18歳以上の人が患者の3分の1を占めています。

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治療の進め方
矯正治療は一人一人違います。治療期間も約6ヶ月から30ヶ月までと個人差があります。症状の程度、患者の年齢、歯の移動の速度などによって、これより早くかかる場合もあります。矯正歯科医による診断の後、治療方法の選択(治療計画)、矯正、保定という手順で治療を勧めます。
1.初診と診断
診察を受けたい矯正歯科医が決まると、予約を取ります。最初の予約(初診)ではまず矯正歯科医の用意した問診票に記入し、それから診察が始まります。疑問に思っていることを尋ねる良い機会ですから、何でも遠慮なく尋ねます。歯科医は矯正治療が必要かどうかを診断して患者に説明します。
~診断上の検査~
詳細に症状を分析して治療法を検討する資料として、顔の写真、歯のX線写真、歯型を取ります。これは歯科助手によって行われます。特にあご、顔、頭の全体が写るセファログラム(頭部X線規格写真)は矯正治療の診断に不可欠です。
2.治療方針の検討と治療計画
治療が始まる前にどのような治療が必要かを詳細にわたって説明し検討する話し合いが行われます。これはちょうどコーチがゲームの前に、チームと戦略法を検討するのと同じです。
問題が単に歯並びだけのことなのか、骨格にも問題があるのか、骨格に問題がある場合、手術が必要になるのかなど、原因や症状に応じて治療方法が異なります。どんなタイプの治療が必要か、どんな結果が期待できるのか、どのくらいの治療期間がかかるのか、費用はどのくらいかかるのかなどについて矯正歯科医または治療コーディネーターと話し合います。患者がこの話し合いに積極的に参加することが矯正の成功につながります。
治療費についても事前に詳細に説明を受け、医療保険がきくかどうかを保険会社に問い合わせます。ほとんどの矯正歯科医は分割払いを受け入れてくれるので、自分にあった支払方法が選べます。
3.矯正の方法
~ブレイスの使用~
ブレイス(歯列矯正装置)には固定式(fixed braces)と着脱式(removable braces)とがあります。着脱式は1本または数本のグループの歯を少しだけ移動するのに使用されますが、定められた時間着用せずに患者が勝手にはずすと、効果がないという欠点があります。
歯全体を動かすような大規模な治療には大抵固定式を使います。着脱式の方が安いのですが、固定式の方が一般的に使われています。固定式は取りはずして清掃しなくてよく、スポーツをする時もはずす必要がなく、着脱式のように発音の妨げにもなりません。
ブレースは最初に「レールロード・モデル」と呼ばれるものが作られてからずいぶん変化しました。今では、「クリア・ブレイス」(白いブレイス)、「リンガル・ブレイス」、「インビジブル・ブレイス」(見えないブレイス)などがあります。
「リンガル・ブレイス」は歯の内側に接着する矯正装置で、舌を刺激し、発音を妨げるという難点があります。現在ではワイヤはニッケル・チタン製の物が使われており、従来のステンレス・ワイヤ製のものに比べて不快感がありません。ブレイスを初めて装着したときと、ヘッドギアをはずしたときは、1~2時間、口の中が痛いこともありますが、すぐに慣れます。
~ブレイス以外の矯正装置~
ブレイスのほかにヘッドギア、ネックバンド、フェイス・マスクのような顎外固定装置が使われることもあります。これは首や頭に巻いたベルトと口の中のワイヤとをゴムひもで結んで引っ張り、歯を移動させる装置です。顎にかぶせるチンキャップという装置は受け口の治療のときにヘッドギアのベルトとゴムで結んで使います。
抜歯
歯並びを矯正するには、健康な歯を抜いてスペースをつくり、歯を移動させて、まっすぐにします。抜歯は上下4本の第一小臼歯を抜きます。上だけを抜いたり、下だけを抜いたり、奇数の数を抜いたりすると上下の歯の数が違ってしまい。噛み合わせがうまくいかないので、上下左右同じ本数を抜歯するのが一般的です。
なぜ第一小臼歯が抜歯の対象になるかというと、抜いても外から見えにくいことと、幅の広い大きい歯でないことや、根が一本しかないのが理由です。
抜歯はかかりつけの一般歯科医、または、歯科口腔外科医がしてくれますので、矯正装置をつけるタイミングにあわせて抜いてもらうようにコーディネートします。
矯正手術
矯正歯科は、子供の成長時期に骨格の発達や変化を利用して、矯正装置によって歯並びやかみ合わせを正しくするものです。しかし、ひどい顎の奇形、たとえば上顎または下顎前突症の場合は、顎骨の外科的矯正手術が必要なことがあります。この手術は歯科口腔外科医が行い、矯正歯科医は手術前後に固定式装置を用いて骨の成長を抑制するようにします。
手術は通常、骨格の成長が止まる思春期以後まであまり行いませんが、骨格の問題が重大で、精神的障害を与えている場合や、ものが全然かめない場合は、思春期を終わるまで待たないこともあります。
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ブレイスをつけた時に注意する食べ物
避ける食べ物は堅いもの、歯にくっつくもの、砂糖を多量に含んだものです。
矯正装置を入れていても装置を壊さないで何でも食べることができますが、上記のタイプの食べ物は問題を起こしやすいので、常識で判断して悪いと思うものは避けます。よくわからないときは歯科医に相談します。
•堅い食べ物:ワイヤを曲げたり、バンドの下のセメントをゆるめたり、小型のブラケットやチューブを壊す恐れがある。
•歯にくっつく食べ物:ワイヤを曲げセメントで接着したところをはがしてしまう恐れがある。
•砂糖を多量に含んだ食べ物:できるだけ食べないようにする。食べたときはすぐに歯を磨く。磨けないときは水で口をすすぐ。
ブレイスをつけているとき避ける食べ物
食べてはいけないもの:
ポップコーン、ナッツ、ピーナッツプリッツル、丸のままのとうもろこし、コーンチップ、クリスプ・タコス、キャラメル、フルーツケーキ、ピザの端、餅、堅焼きせんべい、豆がし、するめ、氷(アイスキューブをカリカリかじるのは注意して噛んでも危険)、レモン(歯のエナメル質を害する)、ガム(歯科医によってはシュガーレスガムを少しだけ許可する場合もある。バブル・ガムは厳禁)
食べない方が良いもの: にんじんスティック(生のにんじんでも薄切りならよい)、りんご(かぶりつくのはだめ、薄切りは良い)、ステーキ(食べるなら小さく切って食べる)、繊維の多い野菜でワイヤに引っかかりやすいもの
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矯正と栄養
正しく栄養を取ることは矯正治療の大事な一面です。矯正によって歯が移動するのは生理的現象です。歯を支えている歯槽骨は軽い圧力で歯を動かし、新しい歯槽骨をつくります。健康な肉体はこの過程を早めます。そして、健康な肉体は栄養の取り方と深い関係がありますから、賢く食事をすることは大切なことです。
摂取の目安
次のような食品を食べ、満遍なく栄養を取るようにします。
1)脂肪分、糖分は取り過ぎない。
2)牛肉、豚肉、魚、豆類、卵のたんぱく質グループは1日2~3サービング。
3)パン、シリアル、米、パスタの炭水化物グループは1日6~11サービング。
4)フルーツのグループは1日2~4サービング。
5)野菜グループは1日3~5サービング。
6)ミルク、ヨーグルト、チーズの乳製品グループは1日2~3サービング。
(1サービングは大皿から自分の皿に取り分ける1盛分。)
ビタミンCは十分に
歯を移動させたとき、痛んだ歯の周囲の骨やコラーゲンを回復するにはビタミンCが必要です。適量のビタミンCを毎日摂取すると、矯正中も健康な歯肉を保つのに役立ちます。1日1~2回ビタミンCを多く含んだ物を食べるように努めます。
ビタミンCの豊富な食品
非常に多く含む食品: パパイヤ、オレンジ、オレンジジュース、ブレープジュース、グレープフルーツジュース、イチゴ、マンゴー、メロン、ブロッコリー、芽キャベツ、ピーマン、カリフラワー、サワークラフト(キャベツの酢漬け)
多く含む食品: アスパラガス、すいか、トマト、トマトジュース、キャベツ、かぶ、からし菜、ほうれん草、ハニーデューメロン、ラズベリー、ベークポテト
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